企業出版で作る本はマーケティングとブランディングのどちらに役立つのか
昨今、マーケティングの手段として本を利用する企業が増えてきています。
こう伝えると、昔から企業が本を出版することは少なからずあったと思われる方もいるかもしれません。
確かに、周年事業の一環として出版された社史や、創業者の半生をまとめた本を目にしたことがあるかもしれません。
また、企業経営者が著者となった、会社の取り組みなどを紹介した本を読んだこともある人もいるでしょう。
でも、実はここで挙げた本の例はマーケティングを目的としているわけではありません。
そもそも、社外向けに読まれることを前提とせずに記念として作られていたり、社外向けに出版されているとしても主にブランディングを目的としていたりします。
今回は、マーケティングに使う本とはどんなものか、ブランディングとマーケティングの違いを整理しながら詳しく解説していきます。
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記事の目次
マーケティングとブランディングの違い
まずはじめに、マーケティングとブランディングの違いとそれぞれの定義をまとめておきましょう。
マーケティング
マーケティングは、企業が買ってくれる顧客を連れてくるための戦略のことを指します。
端的に説明すれば、顧客の興味を喚起して、買いたいという欲求を引き出す行動のことを指すのです。
あなたの会社の商材を買う顧客がどこにいるのかわからない場合は、情報を発信して見込み顧客を見つけ出すマーケティングが必要となるでしょう。
また、あなたの会社の商材がマッチする顧客がわかっていたとしても、必要性を感じていなかったり興味を持ってくれていないのであれば、欲求を引き出すマーケティングが必要となります。
ブランディング
ブランディングは企業のロゴや名称、色などビジュアルアイデンティティの要素と考えられやすいですが、それだけではありません。
ミッションやビジョン、バリューなどの目に見えない企業文化を知ってもらうこともブランディング戦略の一つです。
端的にまとめてしまうと、自社がどんな存在であるのかを認知してもらうための一連の活動のことをブランディングと言います。
【例】ブランディングとマーケティング、目的の違いによる広告デザインの比較
広告を考えてもマーケティングを目的にしている場合もあれば、ブランディングを目的にしている場合もあります。
例えば、以下の2つの雑誌広告を見てみましょう。
どちらも、結婚式場を運営する会社が出稿する広告ですが、主目的が異なります。
広告1はどのような戦略を考えているでしょうか?
結婚を予定しているカップルに、無料小冊子のプレゼント申し込みをしてもらうことを目的としていることが想像できます。
今後、小冊子の申し込みをした顧客に情報提供をしながら無料相談会等に誘導し、最終的に結婚式をここで挙げようと思ってもらうことを目的としている、マーケティング戦略の一環としての広告なのです。
広告2はどのような戦略を考えているでしょうか?
もちろん、タイミングが合えば、この広告を見てすぐに問い合わせをしてみようと思う人もいるかもしれませんが、どちらかと言えば広告2のような広告はイメージ広告と呼ばれるもので、先のマーケティングとは少し異なる考え方で作られている広告です。
イメージ広告は、企業やサービスのイメージや認知向上を目的としている、ブランディング戦略の一環としての広告と考えられます。
雑誌広告ひとつを考えてみても、マーケティングやブランディングのように様々な目的があるものですが、本になるとどうしてもブランディングを目的としたものが多くなります。
これは、本は費用を支払ってもらうことを前提に作られていることが要因の一つでしょう。
マーケティングの目的は見込みのある顧客を連れてきたり、それまで会社やサービスに興味がない顧客の欲求を引き出して興味を持ってもらうことを目的としています。
でも、せっかく見込みのある顧客であっても一般的な本の価格である1,500円~2,000円の費用を支払ってもらうとなるとどうでしょうか?
少しハードルが高いなと感じるかもしれません。
そもそも興味のない顧客の欲求を引き出すことを目的とする場合には、さらに費用を支払ってもらう難易度は上がるでしょう。
一方ブランディング目的であれば、会社の考え方や文化、専門性をアピールできる本は相性が良いと考えられます。
自社の強みや専門性をアピールできますし、本を出している企業=その分野において専門性があるというイメージも持ってもらいやすくなるためです。
上記のような理由から、本というツールは短期的なマーケティングを目的とするよりも中長期のブランディング目的で取り組むケースが多いのです。
マーケティングを目的として本を出版する
マーケティングでもブランディングでも、何かしらの情報を伝えることで行動を起こしてもらったり、イメージ(想像)してもらうという点では似ているところがあります。
そして、企業は目的に応じて、ホームページやSNS、広告など様々な媒体を利用して情報発信をしています。
ただ、前項で紹介したように本は費用を支払ってもらうという性質上、これまでブランディングを目的としているケースが多く、マーケティングにはあまり利用されてきませんでした。
でも、本をマーケティングに利用できるとしたらどうでしょうか?
本でのマーケティングはこれまで多くの企業がやっているわけではない施策であるため、見込みとしている顧客に対して他社と違うアプローチができると考えられないでしょうか?
また、本に掲載できる情報量はセミナーに換算するとおおよそ6~8時間分ぐらいになります。
これほどの情報を体系的に伝えることができるのであれば、潜在顧客の興味を引き出して欲求を生み出すということが実現できる可能性があるのではないでしょうか?
昨今、マーケティングはオンラインでの施策を中心に考えるケースが多いですが、ここで一度オフラインの施策と考えられている本というツールをマーケティングに活かせないか考えてみていただきたいのです。
問題点は大きく分けて
一般的に1,500円から2,000円ぐらいの費用を支払ってもらう必要がある
そもそも本を見つけてもらうことがそもそも非常に難しい
という2つです。
本を見つけてもらうのも大変で、さらに購入というハードルがあることを考えると確かにマーケティングに活用することは難しそうに思えますが、問題をクリアできれば本が持つ効果を存分に発揮できると考えられます。
関連記事:やっている企業が意外と少ない「出版」で差別化を図る
書店の本の多くは「売れる本」を目的として出版されている
ここまで、本をマーケティングツールとして利用することをおすすめしてまいりましたが、ただ本をつくればよいというわけではありません。
特に、書店に並んでいる本を参考にして本づくりを進めると、意外にもマーケティングツールとしては効果が出ない本となってしまうことが多いので注意が必要です。
というのも、書店に並んでいる本の多くは「売れる本」を目的として出版されていることが多いのですが、実はマーケティングツールとして利用する本は「売れない本」でよいのです。
ここで、一般的な「本」について少し解説しておきます。
そもそも、書店に並んでいる本の多くは商業出版という形態で出版されています。
商業出版は出版社が企画を立てて著者を探して書いてもらい、印刷製本して出版する出版形態です。
本が売れると、売上の中から
書店が25%程度
流通業者が10%程度
著者に5~10%程度
出版社が50~60%程度
といった配分で利益を得ることになります。
(※ざっくりとした目安です)。
出版社は編集などの制作にかかる費用や印刷にかかる費用を負担しているため、「売れる本」でなければ費用回収ができずに困ってしまいます。
そのため、書店に並んでいる本の多くは「売れる本」を目指して作られているわけです。
売れる本にするためにはある程度買ってくれる人が多い企画を作る必要があります。
そうなると、初心者向けの本など、マス層に向けた企画となります。
マーケティングツールとして使う本の特徴
一方、BtoBや無形商材を扱う企業がマーケティングで狙いたい顧客は多くの場合、経営者や決定権のある管理職の人となるケースが多く、人数としては少ない層になります。
内容も少し専門的な本にしたり、悩んでいる人数は少ないけどその悩みが深い人を狙った本を作る必要があるかもしれません。
当然、そうした本は売れる本にはなりにくいものなのです。
マーケティングツールとして利用する本をつくることを考えたのであれば、売れる本をつくろうという考え方は必ずしも正解とはなりません。
特定の業種や業態、悩みを持つ顧客を引き付けるような企画を考えることが大切です。
関連記事:ラーニングスによる企業出版プロジェクトの進め方をご紹介
まとめ
今回はブランディングに使う本、マーケティングに使う本のコンテンツの違いについて解説しました。
特に、マーケティングツールにする本の場合はマス向けではなく、経営者や決定権のある管理職の人に刺さるコンテンツの本にするということが重要です。
なお、余談ですが、プロジェクトのスタート段階では特定のターゲットに向けた企画となっていても、プロジェクトが進むにつれて
「あれも入れよう」
「これも紹介しておきたい」
「こうした顧客にも読んでもらいたい」
といったアイディアが次々に浮かんできてしまい、結果として誰にも興味を持ってもらえないような本になってしまうことが往々にしてあります。
そして、多くの場合でスタート段階の企画にしておくべきだったという結論になります。
あれもこれもと欲張るのではなく、一つの本は一つの目的で作りましょう。
あれもこれもと詰め込むのではなく、目的に合わせて本を用意することで、出版は効果を発揮しやすくなるのです。
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